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  • 執筆者の写真生 吉村

野馬土手がついてくる


暗渠データで協力した『千葉凸凹地図』(昭文社)、発売となりました。


以前から収集していた暗渠データのほか、新規開拓もおこなう必要があったため、千葉のあちこちに行っていた。とにかく谷に行き、あるいは古地図を見て実地にゆき検証した。


後半戦に入った頃だろうか。それまで全く気にならなかったあるものが、急に、気になるようになってきた。


「野馬土手」である。


千葉における、ひとつの名物に違いない。江戸幕府の作った馬の牧場である。(詳しい説明は次回にでもおこなうことにする。)


なぜ気になるようになったかというと、わたしが千葉において、「この場所は良いな」と思った地点に、思い返せば野馬土手がある場合が結構あったからだ。


ここは開渠だが、背後の弁天神社と、付近の地形があまりにも素敵で、気に入っている場所の一つ。南柏にある、名都借弁天だ。

『暗渠パラダイス!』を書いた時、知人に紹介いただき、柏の古老にインタビューをした。その古老が、付近のことを色々と教えてくれて、その日は案内できないけどあそこはとても良いからいつか、と言っていたのがここだった。


初訪問時は黄昏時だったのだが、それが最高の演出となって、わたしはこの場所の虜になった。眼前にひろがる低い農地、その真ん中に島のように弁天社があり、水路が取り囲み、そのすべてがオレンジ色に光っている。

あとで考えると、わたしは野馬土手の上に立って、ここを見下ろしていたのだった。


その水路は脇に土手を伴いながら、南柏駅に向かって進んでいく。そこは柏市と流山市の市境になっていて、


松ヶ丘野馬土手と呼ばれる、千葉の中でも最大級に保存状態の良いものである。

柏の古老は、この松ヶ丘野馬土手も解説付きで一緒に歩いてくださった。のだが、当時のわたしは写真に撮っていなかった。この写真は再訪時なのだが、やはり野馬土手の本体をきちんと撮ってはいない。地元の方のページだろうか、実物はこんな感じ。


弁天神社の素晴らしさを伝えるべく、後日高山氏を案内しているのだが、その際に「やばどて」と連呼していたくらい、読み方さえも覚えていなかった。(「のまどて」と読む。)


最初はそういう、”地元の有名な何かだが、自分にはあまり関係のないもの”という位置付けだったように思う。(すみません。)


ところが、だ。もうひとつ、流山で出会った坂川支流の素晴らしい風景。ここも、



見た目が良いだけでなく、コンクリ蓋の下を音をたてて湧水が流れていて、「あじさい通り」と呼ばれていて、季節になれば紫陽花が見事だという。なんという特等席。


その紫陽花の土手が、野馬土手だということを、後から資料で知った。


また野馬土手。なんだか、自分の行くところに、野馬土手がついてくるような気がした。


それから、暗渠ではないが、柏駅前にある非常に雰囲気の良い飲み屋。



これも『暗渠パラダイス!』の取材時に見つけ、たいそう気に入り、絶対に飲みに行くぞと心に誓い、わざわざ桜の季節まで待って飲みに行った。



非常に良かった。

そしてこの飲み屋もまた、野馬土手沿いなのである。


ここは土手はすでに残ってはいないが、柏駅前は、実は野馬土手の宝庫である。この先にのびる飲屋街のラインは、野馬土手の名残なのだった。


他にもある。『千葉凸凹地図』のための新規開拓でくぬぎ山駅付近の暗渠を確認しに行ったが、ここがなかなかすごかった。


駅から1分で暗渠!


ここも極上と思っているものの一つ。で、この少しだけ下流沿いに、なんだかとっても違和感のある、薄い壁に囲われた石碑群があって、



なんだかとても強い引力があった。

全ての石碑を見て写真に撮ってはいたのだが、この中に野馬関連のものがあるということが、最初はあまり大したことに思えていなかった。多分、隣にあった馬頭観音と同じような扱いだったのだと思う、自分の中で(馬頭観音も好きなんだけれど)。


再訪し、ふたたび覗き見て、



うわああああ野馬って書いてあるーーーー!!


と、なったのであった。


この「野馬観世音供養塔」は、初富で行われていた「野馬観音講」とかかわるものでかなり希少。千葉であっても、馬頭観音は多いが、野馬観音と書かれたものはまだ他に見つけていないし、「講」になっていたとは。


もうひとつ。

根郷川の上流端である貝殻山公園は、「動物を捨てないで」とか「粘土を捨てないで」などという看板が相次ぐ強烈なスポットだった。



色々あったんだろうな、、、などと思いながら通り過ぎつつ、馬の銅像が主張の強い感じで置いてあったので、一応写真に撮った。



その後使うこともあるまいと思っていたが、これも野馬土手関連だった。



なんということだろう。暗渠を追いかけて行動しているわたしが、ちょっと気にいる場所があると、そこに野馬土手があると判明、ということが連続する…


野馬土手に追いかけられている。そう、感じた。


それで、こんな本を買ってしまった。





絶版であり、割とえげつない値段で取引されていたが、それでも買うことを決めた(研究費で落ちないのに、だ)。

野馬土手にはまりつつある自分がいる。暗渠用の紙の地図に、明治の地図から野馬土手もプロットした。暇があれば千葉に行きたくなってしまっている。しかしどうも、有名どころの野馬土手はそんなにそそらない時もあるし、「探す段階」や「それっぽいが裏付けなし」のような時が一番たのしい気がしている。途中ではあるが、数は集まってきたので…自分は野馬土手の何が好きなのか? 野馬土手とはどういうものなのか? 探すことがどのように楽しいのか?…何回かに分けて、記述していってみたいと思う。


閲覧数:257回3件のコメント

3 commenti


土手子 野馬
土手子 野馬
19 lug 2023

返信ありがとうございます。


松ヶ丘の野馬土手に初めて行って、夢中になって、4日連続で行ったところ、野馬土手の方から私に声をかけてくれるようになりました。

なので、野馬土手子を名乗っていいかなと。


私は柏市豊四季に住んでいて、周りはどこもかしこも牧の跡地です。


野馬土手が無くなって、名残は野馬掘跡の水路の蓋だけだったりします。


3部作、気長に待ってます。


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土手子 野馬
土手子 野馬
25 giu 2023

こんにちは。アメブロとツイッターに、野馬土手子の名で投稿している者です。

あじさい通りは野馬土手ですか。知りませんでした。


野馬土手の存在を知って3年ですが、

それ以前に、わけもわからず魅かれた場所が野馬土手跡だったことが何度かあります。


今は柏市に住んでいますが、育ったのは市川市。

近所では川がどんどん埋められて行きました。


暗渠の前身は、川だったり、野馬掘だったりするのでしょうか。

野馬土手にも興味を持ってくれるなんて、嬉しいです。


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生 吉村
生 吉村
29 giu 2023
Risposta a

こんにちは。コメントありがとうございます!

野馬土手子さんというかたがいっらしゃるとは!流石野馬土手です。一度気になるとすごくアンテナ張るようになりますよね、、、この記事、3部作で考えているんですが書く時間がなかなか取れずにいます。

野馬土手の景観、なぜか魅力的ですよね。野馬堀が暗渠化する例もあり、独特でおもしろいエリアだと思います。


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