• 生 吉村

暗渠とサンマーメンと私【前編】

更新日:2021年10月31日

絶望的なほどに猫舌なので、覚悟を決めて挑む。まず麺を掘り起こし、レンゲに大量に乗せて冷ます。啜る。冷ましながら啜る。翌日は案の定、舌が火傷している。

サンマーメンと自分とは、そのような覚悟のうえ、付き合うものだ。実は「はま太郎」の「南区特集号」のとき、横浜市南区の暗渠を全て歩くために毎週南区に行っていて、その際に「必ずサンマーメンを食べるという縛りを課そうかな」との思いがよぎったのだが、よぎって、消えた。こんなふうに覚悟がいる、ということと、あと、以前の「板橋区の暗渠に行くたびにカレーラーメンを食べる縛り(板橋カレーラーメン紀行)」ほど、謎解き目的が得られなかったので、やめていた。


しかし再び、横浜に通う日々が訪れた。横浜川崎鎌倉凸凹地図(昭文社)に暗渠データを提供することになったためだ。しかも今度は、あらゆる区に行く必要がある。つまり、サンマーメンを自分に課すときがやってきた。己の弱さと向き合う時がやってきたのだ。


以下は、サンマーメンを食べ続けた記録である。これまでほとんど食する機会がなかったため、出会いから関係性が深まってゆくさまも、自然と描かれることになるだろう。

大おか 



砂田川支流暗渠沿い、西菅田団地のなかのショッピングセンター内。蕎麦屋である。だが、つまみあり酒あり、メニュー豊富の万能型蕎麦屋だ。「(サンマーメンなんて)無いでしょう」と呟きながら近寄ったら、まさかのサンマーメンあり。注文する。黄色く細い麺が独特のビジュアル(これまで見たことのない麺という印象)で、やや柔らかい。スープは醤油ベースにあんかけ、しょうがの味もしておいしい。具はもやし、にんじん、ニラ、キャベツ、豚肉、ナルト。この店ではいろな事件が発生したのであるが、割愛する。

金子園 



こどもの国駅前、ビルの2階だが味がある。昔はもっとよかったろうな(古い写真があった)。サンマーメン800円。よく見ると(醤油味)と書いてある。もやしそばと五目そばには(しお味)とある。ふむふむ、相性によって変えているのだな。麺は黄色くて細い。大おかのとき、黄色すぎて驚いたが、さほど違わない。こちらの方が少し黄色が薄く、縮れもコシも少しある。具は豚肉(パックから出してすぐのように重なっている)、ニラ、にんじん、もやし、玉葱、きくらげ。スープの味はあまり深くはなく、あっさりと食べ終えた。サンマーメンって、もしかしたらヘルシーな食べものなのかもしれない。


金子園の看板


京新 



東寺尾、入江川近く。サンマーメン680円。醤油ベース、具はもやし、ニンジン、ニラ、豚肉。麺はやはり細めだが縮れていた。だんだん、サンマーメンの麺のデフォルト(の幅)がわかってきた。目の前でサンマーメン出前が6つも入り、女主人が手際よく切り盛りする。お姉さんとの連携も良く、とても雰囲気の良い店。女主人の作るあんかけはさすがの香ばしさで、甘く美味しい。しかし他でもそうだが、やはり味が薄めである。もしかして、この麺類は自ら酢や辣油で調整していくものなんだろうか(岩手のじゃじゃ麺がそうであるように)?

自分がラーメンを食べたいと思う時は、ガッツリ濃い味のスープにニンニクをどばしゃあ!とかけ、太い麺をズルズル啜る。そういうことがしたい、と思う時。それに対しサンマーメンは、あまりにもたおやかでやさしくて健康的すぎるのだ。どう改造していこうか…

桃太郎 



屏風浦。850円、醤油ベース。やはり麺はこれまでと同様だ。具は、もやし、にんじん、玉ねぎ、キャベツ、ほうれん草、キクラゲ、豚肉、タケノコ。種類が多い。味は標準的。さあ、半分食べたら味変をやってみよう。まずは酢。皿うどんなどに酢をかける人がいるが、わたしはやらない。かけてみたら、なかなか。やがて拡散するが、酢はアリだな。次、ラー油。ピザやパスタの味が消える気がしてタバスコをかけないのだがそれと同じ。ラー油はナシだな。最後、にんにく。これは好きな味になった。にんにくはアリだが、サンマーメンの精神からすると反則をしているような気もする。

天翔 



鴨志田。800円。町中華というより中国の方がやっている中華料理店。そもそも町中華とは無縁そうな印象の青葉台である(一方的なイメージ)。この日、前日にすこぶる嫌なことがあって痛飲、二日酔いでやってきた。喉が焼けるように痛い。青葉台の駅では腹も壊した。メニューにある「スパイシーラーメン」が気になるが、サンマーメンをたのむ。具は、もやし、玉ねぎ、ニンジン、ニラ、豚肉、とろみ強め。醤油ベース細麺。啜り始める。ああ、やさしい。胃が驚かなくて済む。ここで坦々麺を食べようものなら、午後は腹痛波と戦い続けることになるであろう。サンマーメンのやさしさに守られたような安心感でもって、食べ進める。今日はラー油もニンニクも混ぜる気にはならない。薄味のあんかけのやさしさ、油が主張しない全体、消化の良い細麺。これがいい。サンマーメンは、二日酔いに最もやさしいラーメンなのかもしれない。

玉家 



本牧。850円。和食と中華がうまい店、とある。日中友好食事処、とも。独特の、そして歴史を感じる店だ。昔から三溪園に行く客をもてなしてきたのだろう。蕎麦や丼もあるが、バンメンにタンツーメン、チャーハンも実にうまそう。店主と常連さんのやり取りが心地よいな、と思いながら待つ。着丼。しょうゆのスープを一口啜ると深みあり、これはラー油等の調整のいらないタイプであると直感。具はもやし、ニンジン、きくらげ、白菜、青梗菜、豚肉。麺は細いがポクポク、ぴちぴちと硬い。これは好み!玉ねぎとニラが入らないので物足りないかと思いきや、いやいやむしろ、上品で深い味わいがよく立っている。あっという間に完食。この風貌(失礼…しかし他の街だったらラーメン系に期待できないタイプだと思う)で美味いってすごい店だ。さすが横浜である。


玉家外観


めんくい 



本郷台。800円。いたち川支流に背を向けてたつ、マーケット的な空間の一角。風情が最高に良い町中華。出前のためか、壁にゼンリン住宅地図が貼ってある。少し年季が入っている気がする…近づいて凝視したい気持ちに駆られる。と思っているうちに着丼。メニューにある「パイコウローメン」がきたのかと思った、大ぶりのキャベツに豚肉。でもサンマーメンだった。具はもやし、キャベツ、玉ねぎ、サヤエンドウ、きくらげ、豚肉。ニンジンがなくサヤエンドウの入るタイプ。スープは塩に近い色で、啜るとカツオ粉の味がする。麺は標準的だが、旨味と塩味がしっかりしたタイプで、何も混ぜようと思わなかった。実は3日続けてサンマーメンを食べているのだが、店による違いが浮き彫りになってきた感。おもしろいな、と思う。



つづく。

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