「メルセスの池」を追いかけて
- 生 吉村
- 5月20日
- 読了時間: 5分
ある日の飲み会で偶々向かいに座ったとある方が、話の流れで、光塩女子学院に幼稚園から高等科まで通っていたことが判明した。光塩の幼稚園は、メルセスの池があるところだ。
(注:光塩女子学院は環七の西側に校舎がある印象が強いが、幼稚園は環七の東、東高円寺駅から北上した位置にある)
メルセスの池については、桃園川探検隊のAさんによる聞き取りがすでになされていて、桃園川に流れ込む池ではなかったということが明らかになっている。

いっぽう、(高円寺の)谷中の商店街などで話を聞いてみると、少年時代、桃園川支流のドブよりもメルセスの池に忍び込んで遊んだ、という思い出を持っている人が複数いて、わたしの中でメルセスの池が再び気になるようになっていた。
くりかえし忍び込むほどの、近隣少年に人気の池。光塩の中の人にとっては、いったいどんな存在の池だったんだろう?
そこで、その向かいの席の方(わたしよりもひと回り歳上と推定)に、幼稚園に池がなかったかということをしつこく訊いたところ、見たことも聞いたこともない、と仰る。飲み会のメンバーにはわたしの暗渠面について知る人も知らない人もいたのだが、知っている人はわたしの眼の色が変わったと言ってゲラゲラ笑っていた。だってそうもなるでしょう、こんなチャンスは滅多にないんだもの。
ともあれ、意外な答えで、中の人は池を知らなかった。もしや幼稚園児が近づかないよう、秘匿されていたのだろうか? N=1でしかないけれど、興味深い事実である。
そのことを某SNSで書いたところ、光塩に通っていた人は実はわたしの周囲にもいたことがわかった。そして、ほとんどの人に、池の記憶はなかった。
さらに、知人を介して情報を集めてくださった方もいて、
・池はあった(ザリガニを獲りに行きシスターに怒られた人がいる)
・幼稚園の敷地の一部は今は高円寺東公園になっている
・現在池はなく、そこに修道院が建っている
ということが、わかった。
そういうことだったのか……!!
昭和30年代の航空写真を見てみると、たしかに建物の南に池のようなものがある。気がする。陰かもしれないけど。
そして、高円寺東公園のところには建物が建っている。しかも、結構な密度で建っている。おそらく当時のメルセス修道院の建物の本体はむしろ東公園のところのほうで、現在の修道院周辺は池のある森のような、自然豊かなエリアだったようだ。

メルセスの池は、「ある世代までの人なら知っている」池だった。
それは何年までのことだろうか。
図書館へ行き、『光塩女子学院50周年誌』を見てみる。光塩高等女学校設置認可が昭和6年で、同年、第一回目の入学式。小学校と中学校の設置認可が昭和22年。そして幼稚園は昭和31(1955)年に開園している。最初は木造の小屋だったらしい。校舎を改築した記載はあるが、その時期は書かれていなかった。
もともと修道院として使っていた「木造の小屋」、おそらく前掲写真のうち西側に並ぶ建物のどれか、を、幼稚園として使い始めたのかもしれない。
(話が錯綜してしまうが、昭和6年の女学校建設当時の風景が描かれていて、それもまた興味深いものだった。赤松の並木があり、まわりは植物園で、特にツツジがきれいだったのだそうだ。女学校の敷地は北に桃園川に向かって下る谷があるところなので、そこに植物園があるのは相応しい気がするのだ。)
光塩幼稚園のウェブサイトには1965年に新園舎建築、とあるので、その時におそらく池を埋め修道院を改築、ということも同時に行われたと見ていいだろう。
高円寺東公園は昭和43年開園なので、これも概ね符合する。
つまり、「メルセスの池が光塩幼稚園と同時に存在していた」のは、昭和31年から昭和41年まで、ということになる。
こういう書き方をしたのは、池がその前から存在していた可能性が高いためだ。
桃園川や支流が開渠で残っていても、すでに汚れたドブに過ぎず、生き物が棲むような状態ではなかった時代。近所にザリガニのいる池があったなら、そりゃあ少年は遊びに行くだろう。きっと何人もの少年が、ザリガニを釣ろうとしてはシスターに怒られていたのだろう。
結局、見取り図や池そのものの写真は得られないままなので、わからないこともまだ多い。湧水があったのかどうか、も。
地形を確認すると、湧きそうな気もして……


かつてはこの、高円寺東公園の敷地に修道院関連の建物が建っていた。
現在、光塩幼稚園の建物は取り壊されており、絶賛工事中だ。高円寺東保育園が新しくできた高円寺図書館のそばに移り、もと高円寺東保育園の場所に一時的に光塩幼稚園が引っ越してきている。

幼稚園が建て直された時、そこに池ができていたら、わたしとしてはとーーってもおもしろいのだけれども、さてどうなることでしょう?
本件に関して情報提供してくださった、また情報収集してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。




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